非居住者に報酬を支払う際の源泉徴収の注意点
2016年7月1日 1:47 PM | カテゴリー:税理士業務日誌 | コメント(0)
伏見稲荷大社,京都 |
本日のエントリーは、非居住者(アメリカ在住の外国人)に報酬(使用料)を支払った場合の処理について書いていきたいと思います。
以下のケースを考えてみたいと思います。
・非居住者(アメリカ在住の外国人)に報酬(使用料)を支払った。
・「租税条約に関する届出(様式3)」を期限までに提出できなかった。
非居住者とは?
日本国内に住所がなく、現在まで引き続き1年以上居所がない個人をいいます。
租税条約の特典
二重課税排除のため、日本と租税条約を締結している国に居住している個人に対して報酬を支払った場合は、本来なら20.42%の源泉所得税を徴収するところを、所定の手続きをすることによって、源泉所得税の徴収が軽減または免除される規定です。
今回のケースでは、相手国が日本と租税条約を結んでいる国であるアメリカなので免税措置があります。つまり、非居住者が日本法人から報酬を受け取る場合については、租税条約の規定に基づき源泉所得税額の免除を受けることができることになります。但し、この免税を受けるためには一定の手続きが必要となってきます。(租税条約を結んでいない国の場合は、20.42%の源泉徴収税額を支払うことになります。)
管轄税務署に必要な届出書を提出する
まず最初に、非居住者が日本法人から報酬を受け取る前日までに、「租税条約に関する届出(様式3)」という届出書を管轄の税務署に提出する必要があります(報酬の種類によって届出書が異なります。今回は、使用料なので様式3になります)。通常は、税理士などが代理人になって書類を作成、提出することになります。ただし、報酬を受け取る前日までにこの届出書を提出することができなかった場合は、一旦、源泉所得税を徴収、納付することになります。では、納付した源泉所得税は戻ってこないのかというとそうではありません。これも、一定の手続きをすることによって還付されることになります。この手続きが「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」です。ただし、還付金の振り込みには通常、1~2ヶ月程度かかります。
これら「租税条約に関する届出(様式3)」と「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」のいずれにも、報酬を受ける非居住者の署名が必要になります。その他にも「特典条項に関する付表(様式17)」を提出する必要があります。
そして、本当に報酬を受け取る非居住者が租税条約を締結している国に居住しているのかを証明するものとして「Form 6166 – Certification of U.S. Tax Residency」という居住者証明という書類が必要になってきます。このForm6166という居住者証明を発行してもらうために、「Form 8802, Application for United States Residency Certification」を米国歳入庁(IRS)に申請する必要があります。つまり、Form 8802でもってForm 6166 を入手することになります。
特に、源泉徴収税額を免税できるのは報酬を受け取る前日までが提出期限なので、租税条約締結国に居住している個人に対して報酬を支払うことがわかっている場合は、期限までに「租税条約に関する届出(様式3)」を管轄の税務署に提出することが重要になってきます。提出期限を過ぎても源泉徴収税額は「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を提出することにより戻ってくるのですが、時間も労力もかかるので、やはり報酬を受け取る前日までに「租税条約に関する届出(様式3)」を提出することをお勧めします。その場合でも、居住者証明を取得するのに、1ヶ月以上はかかる場合もあるようなので、報酬を受け取る日の2ヶ月以上前から準備する必要があるということになります。
まとめ
- 1.「租税条約に関する届出(様式3)」を期限までに提出
- 2.上記を提出期限までに提出できなかった場合は、「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書(様式11)」を提出
- 3.「特典条項に関する付表(様式17)」を提出
- 4.Form 6166 – Certification of U.S. Tax Residency」という居住者証明が必要
- 5.Form 6166の発行には、Form 8802をIRSに申請する。
- 6.契約書等があれば添付書類として税務署に提出
- 7.Invoice等があれば添付書類として税務署に提出
- 8.還付手続きの場合は、報酬を受ける人の金融機関と口座情報が必要