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ネット個人輸入ビジネスで稼ぎ続けることは至難の業


 「Amaonでの販売ができなくなり、結果クレジットカードの支払いができなくなったので会社をたたみます。」という内容のメールがつい昨日お客様から送られてきました。

 ずっと資金繰りに窮していたので心配はしていたのですが、やっぱりというかとうとう会社の継続が難しくなる状況がきてしまいました。そのお客様は、海外のAmazonやebayなどのネットショップ等から商品を仕入れて日本国内のAmazonやヤフーショップで商品を販売していました。俗に「個人輸入ビジネス」や「転売屋」などと言われているようです。「個人輸入」とは言うものの法人形態で行っている人が多いようです。

 約7〜8年くらい前に非常に盛り上がり出した業種です。「ネット個人輸入で誰でも儲けるセミナー」などが日本中の至る所で開催されていました。そこには「専業主婦でも簡単に月100万円!」「パソコン1台あればすぐに始めれます!」「世界中を旅しながら稼ぐことができます!」という触れ込みだったと思います。本屋で売られている、ebayやAmazonのネット個人輸入やネット個人輸出の本をめくると、いかにも誰かのサクセスストーリーが自分の手元にも転がり込んでくるような、そんな錯覚を覚えさせてくれます。

 確かにコツを掴むと、一時的には月100万円の売上高を上げることも可能かもしれません。しかし、それを継続することが非常に難しいのです。儲かり出すとすぐに真似されてしまうからです。しかも、今どんな商品が売れているかは、専用ツールを使えば誰でも分かるのだそうです。であればなおさら誰でも真似をします。真似をされるとまた儲かる商品を見つけるのです。そしてまた真似され・・・ということの繰り返しです。常に走っているような状況が永遠と続いてしまうのです。そして、資金繰りにも頭を悩ませる事になります。夜も土日も、頭から仕事のことが離れることはありません。休日のレジャーも心から楽しめなくなってしまうのです。

「商売の要は仕入先にあり」

 ネット個人輸出入販売が稼ぎ続けることが難しいことの原因を一言で言うと「仕入先と契約書を交わしていない」からです。「誰でも仕入れることができる場所で仕入れている」ということは「すぐに真似をされてしまう」ことを意味しています。例えば、ある人がAという儲ける商品をパソコンだけで見つけたとしても、他の誰かもその商品をパソコンだけで見つけることができるはずです。そして、その商品を販売している会社は、仕入れてくれる業者が多くなるほど売上高が上がるので、また契約書も交わしていないので誰にもでも売ってしまいます。

 そもそもネット個人輸出入販売のビジネスモデルに問題があるのだと言えます。通常は、仕入先と流通ルート(その商品を自社以外に売らないこと)や価格などについてきっちりと書面にて契約を交わします。そのような契約書を仕入先と交わしていないので非常に厳しいビジネス形態と言えるかもしれません。しっかりした仕入先を確保していれば、魅力的な売り先は自ずとついてくるものです。しかし、その反対はないのです。まさに「商売の要は仕入先にあり」です。

税理士事務所泣かせの会計処理と税務処理

 当事務所では、約5年くらい前から個人事業主でも法人でもネット個人輸出入販売のお客様の関与はしておりません。というのも、この業種特有な事象として、頻繁に仕入先が変わるので、内容確認のための作業が多くなってしまうということです。また、クレジットカードで仕入れるので仕訳処理数が半端なく多くなるということもあります。現在は、クラウド会計があるのでその点の大部分は解消すると思いますが。

 一方、多くの会社は仕入先や売上先は毎月ほとんど同じなのです(つまり事業が安定しているということです)。なので、慣れれば数ヶ月で、クレジットカード明細や通帳の摘要欄から内容を類推できるのです。しかし、ネット個人輸出入販売はそうはいきません。初めての摘要語句が毎月発生することも珍しくなく、その都度確認する必要がでてきます。また、税務処理で言うと、IRS(アメリカ歳入庁)関連の書類の作成を依頼されることも珍しくありません。他のお客さんと比較して会社をたたむという頻度もそれなりに起こってしまい、そのような状況から当事務所としては関与自体を徐々にしなくなりました。

まとめ

  一時期は本屋に行くと、ネット個人輸出入販売で儲ける本が本棚の最前列に並び、それなりに販売数も多かったように思いますが、今はほとんど新刊も出ていないようです。現在は、ブログをプラットフォームにして稼いだり、noteやvaluなどネットで稼ぐ方法がいろいろと出てきているのもその理由かもしれません。

 貴社の強みは何ですか?技術力?商品力?これにすぐに答えることが出来ないと、会社の継続は非常に厳しいです。少なくとも一朝一夕に他社が追いつけないような技術力を有するか、他社が羨むような商品を独占販売することができれば、会社の継続はそれほど難しくはないと思います。


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