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【書評】あなたはなぜチェックリストを使わないのか?


 著者は外科医で、チェックリストの重要性を説いている本です。巨大ビルディングの建築、外科医の手術、航空機のパイロット、一流レストランのシェフなどを例にとり、チェックリストを使うことによって、うっかりミスや間違いをなくす効果があると書かれています。特に、毎回同じ作業を繰り返す場合はより効果的であるようです。チェックリストは職種、分野に限らず効果的であるようです。

「チェックリストはどうやら想像以上に幅広い分野で、素人からベテランまで万人に有効らしいということが分かってきた。人間の記憶力や注意力には限界があるので、見逃しやミスはどうしても起きてしまう。チェックリストはそのような失敗を防いでくれる安全網なのだ。」

 確かに、タワーマンションの建築現場を見るたびに、「どうしてあのような高層建物が間違いなく正しく建築できるのか?」という疑問を持ったことがあります。
 基礎工事から始まり、コンクリートの注入、壁素材等の搬入、それらの手順を少しでも間違えると現場が混乱して構造物自体に問題が生じます。しかし、ほとんどそのようなことは起こっていないのです。そこには、チェックリストの存在があったのです。

 税理士業務においても、法人税申告書の作成、年末調整業務などはチェック項目が比較的多いと言えます。その一方で各顧問先ごとのチェック項目、申告書作成手順はあまり変わることはありません。このような業務こそチェックリストを使うことは非常に有効だと思います。

 例えば、当事務所ではその一例として「法人の申告業務完了時のチェックリスト」として、以下のような手順チェックリストを作成しています。そして、そのチェック項目に従って業務を勧めています。そのため、ほとんどミスもなく、業務自体も早くなっていると感じています。



【法人:電子申告を終わった後にやること手順チェックリスト】

  • 電子申告が完了する
  • メッセージボックスでダイレクト納付の指示を行う
  • 電子申告完了報告書をPDF印刷する
  • 決算書一式、勘定科目内訳書、概況書、法人税申告書、、消費税申告書、メール詳細等をPDF印刷する→すべてAcrobatで結合する→顧問先別フォルダへ保存すること
  • 決算書、勘定科目内訳書、概況書は印刷して管轄税務署へ送付する。
  • 遠方のお客様には、納付書を達人でPDF印刷してメールで送ること。(納付期限も必ず連絡すること!)
  • 決算書一式、勘定科目内訳書、概況書、法人税申告書、メール詳細等を印刷してファイリングする
  • 総勘定元帳と補助科目元帳と印刷してファイリングする
  • 税額一覧表を印刷すること→消費税額の欄の記載忘れないこと。金額は、達人のデータを翌期更新して確認する→結合済みのPDFのページに追加する。
  • 電子申告進捗管理の入力する。ダウンロードして、グーグルスプレッドシートに貼り付ける。
  • 遠隔地のお客様の場合は、捺印箇所に付箋をつける。
  • 顧問先訪問時に納付書の金額を記載する場合は、法人税の達人で予め納付書を印刷して持って行くこと。
  • 翌期の中間納付(法人税、消費税)があるかどうか伝える→年3回予定納税がある場合は特に注意!。
  • 予定納税がある時は、Googleカレンダーの予定納税の月に登録すること→電子申告→ダイレクト納付指示
  • 翌期予定納税が発生する場合は、データを繰越して「予定納税の申告書」を印刷してお客様に渡す
  • 納付期限3日前に「納付期限のお知らせ」のメールを自動配信するように設定すること。
  • 納付期限が到来したら、ダイレクト納付が納付済みになっていることを確認すること
  • 総勘定元帳、決算書ファイルが残り5冊になったらエッサムへ注文すること(型番はJ220U0、J10500)

【ファイルに閉じる書類】

  • 電子申告完了報告書
  • 納付税額一覧(消費税は手書き、翌期予定納税が発生する場合は、金額を記載すること)
  • メール詳細
  • ダイレクト納付受付完了
  • 法人税申告書
  • 消費税申告書
  • 決算書→(財務応援の場合は、決算書勘定科目が「システム設定値」になっていないか必ず確認すること!)
  • 株主資本変動計算書
  • 注記表
  • 減価償却費台帳
  • 決算書
  • 勘定科目内訳書
  • 概況書

 当事務所はすべて手順チェックリストで動いていると言っても過言ではありません。上記のチェックリストの他、「決算訪問時チェックリスト」「決算月チェックリスト」「決算翌月チェックリスト」「決算翌々月チェックリスト」「法人税申告書作成チェックリスト」「年末調整業務チェックリスト」などなど。そして、顧問先ごとの月次処理に関する手順チェックリストも作成しています。これらのチェックリストはGoogleサイトで「松田税理士事務所チェックリスト」というサイトを作成して管理しています。(Googleサイトの活用方法については後日ブログで紹介したいと思います。)

 ただ、チェックリストの否定派も存在しており、彼らは職業専門家はプロなのでチェックリストなんて使うことは邪道だとか、チェックリストを使わうのは素人だとか、または、仕事のやり方が硬直的になってしまいイレギュラー時に対応ができいないと言っています。しかし、著者(外科医)はこのように反論しています。

「人々が手順を守らない理由のひとつに、硬直化が怖い、というのがある。機械的にチェックを行っていたのでは現実に対処できなくなる。チェックリストばかり見ていると心のないロボットのようになってしまうと思いこんでいる。だが実際は、良いチェックリストを使うと真逆のことが起きる。チェックリストが単純な事柄を片付けてくれるので、それらに気を煩わせる必要はなくなる。その分、難しい問題に専念できる。」

高度職業専門家の航空機パイロットや外科医でさえチェックリストを使っているのです。そう考えると、やはりどんな分野の職業であってもチェックリストを使うことに疑う余地はないと思います。特に繰り返す作業や確認事項が多い業務などは積極的にチェックリストを使うべきだと思っています。毎回、「前回はどうやっていたのか?」と確認し直す時間だけでも非常に無駄なことです。

 私もこの本を読むまでは、経験の浅い若手ならまだしも、数年のキャリアのある熟練者がチェックリストを使うなんて、と思っていましたが、やはり人間誰しも、好不調があります。二日酔いのときもあれば、寝不足の時もあります。常に100%の力を発揮できるわけではありません。やはり、プロ、素人に関係なくチェックリストを使ったほうがいいではないでしょうか。


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