在宅勤務(テレワーク)を導入して1年が経ちました。




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LOIRE,FRANCE

2013年の11月から、当事務所では在宅勤務を導入しています。現在、手伝っていただいてるスタッフの方は埼玉県在住の主婦の方です。大手の税理士法人に数年間勤務し、その後も税理士事務所に勤務をされていた非常に実務スキルの高い方です。「スタッフは埼玉県に住んでいます。」と言うと、ほとんどの方は驚かれます。「どうやっているのですか?」という驚きの第一声がほとんどです。しかし、1年間やってみて、ほとんど場所的な問題はないと言っていいと思います。(双方にある程度のITリテラシーが必要ですが。)また、税理士事務所だから可能というわけではなく、ほとんどの業界で可能であると思います。

本日のエントリーでは、どうやって日々の業務を大阪府と埼玉県とで行っているのか、また在宅勤務(テレワーク)のメリットやデメリットなどについて考えていきます。

求人を出してもいい人は来ない。

ちょうど人材募集を考えていた2013年の秋くらいに、民間の広告代理店に新聞の折込求人広告を、それに加えてハローワークにも求人を出していました。即戦力のある方のみに絞って、採用活動をしていました。結構、応募はあるのですが、1ヶ月経っても採用したいと思う方はひとりも来ませんでした。応募者のほとんどが、企業の経理経験者(企業での経理経験が10年あっても、税理士事務所ですぐに実務が出来るわけではありません。)や簿記2級を保持されている税理士事務所の実務経験のない方ばかりでした。そうこうしているうちに、繁忙期である年末調整の時期に差し掛かろうとしていました。少し焦りかけていた時に、とりあえず年末調整だけ外注さんにお願いして乗り切ろう、年末調整が終わる頃までには、いい人が見つかるだろうと考えていました。


実は、当事務所は、それまでにスポットで外注さんに仕事をお願いしていることがありました。お客様とのご契約後、決算業務から始まるパターンや、資料を1年分まとめて送ってくるお客さん(一応契約は月次顧問契約なのですが。)などがおられ、ある特定の時期だけ非常に仕事量が多くなるという、仕事量にバラつきがあるという問題点を抱えていました。そこで、そういう時期だけ外注で仕事をお願いしていました。実際、外注していたのは2~3名ほどでしたが、どの方も非常に優秀できっちり仕事を期限内に納めてくれる方ばかりでした。その中のひとりが現在のスタッフでもある埼玉県の方でした。

 大阪府と埼玉県とで年末調整業務が始まりましたが、お互い初めてなことなので、初めは多少不慣れなことがあったような気がするのですが、すぐに問題ないことが分かりました。そこで、考え方を180度変え、地元での採用は諦め、埼玉県の方に今後の日々の業務もお願いすることに決めました。スポットではなく、週4日の勤務体制で働いてもらうことになりました。
(結局は、採用しようと思う方は求人の最終期限まで待っても来ませんでした、この原因のひとつに、当事務所の所在地が箕面市であるということもあるかもしれません。大阪市内など都心部なら、採用したい方が見つかっていたかもしれません。)

在宅勤務(テレワーク)に役立つITツール

日々の業務の流れを書く前に、毎日の業務で使っているITツールを紹介します。

スカイプ(Skype):無料で通話やチャットが可能。
DropBox:言わずと知れた超有名なインターネット上のファイルストレージサービス。
VPN:Virtual Private Network(バーチャル プライベート ネットワーク):主に、埼玉のスタッフが私のパソコンにログインして操作したり、事務所内のサーバーにアクセスしたりしています。毎日、使っているわけではありません。
TeamViewer:パソコン遠隔操作のソフト。アメリカでも多くの有名企業が利用しています。セキュリティも非常に高く、画質もいいです。主に、私が埼玉県のスタッフのパソコン画面を見たり操作する時に使っています。
Google Apps (Gmail、Googleドキュメント、Googleカレンダー、Googleサイトなど):これがないと、もはや仕事ができません。当事務所では、2008年から使っています。
salesforce:顧客管理ソフト。顧問先ごとの確認事項や、タスク事項を管理。いつまでに何をする必要があるのかなど設定しておくと、その日時にアラートしてくれる便利なツール。

実際の日々の業務の流れ

スタッフはだいたい朝8時から仕事を始めます。予め前日にやって欲しいことを伝えておくので、私がいなくても自由に仕事を始めることが出来ます。朝8時は、まだ私は自宅にいることが多いです。私が出勤すると、それを伝えるために「おはようございます。本日もよろしくお願いします。」とだけ、Skypeチャットで伝えることにしています。

日々の入力での確認事項や不明事項など、私に伝えることなどは勤務時間中にSkypeのチャットでやりとりをしています。(通話ではなくテキストメッセージです。)これが結構、相手の仕事の邪魔をしなくていいので、非常に仕事効率が上がると思っています。もし、同じ空間にスタッフが居てると、気軽に「これ、どうしましょうか?」と、仕事に集中している私に聞いてくることになるでしょう。そうなると、私は一旦仕事を中断することになります。一旦、集中が途切れると、またそれまでの集中力まで高める作業が必要になります。これが日に何度もあると仕事効率が落ちてしまう原因にもなります。なので、現在は、埼玉県のスタッフからSkypeでメッセージが入っても、集中しているときは、無視していることもあります。ただ、ずっと放ったらかしでいると、スタッフの業務が進まないので、数分後には送り返すようにはしています。

 共有するファイルは、Dropboxに入れておきます。瞬時に大阪から埼玉のパソコンに表示されます。そして、スタッフが会計ソフトへの入力段階で、私がそのパソコン画面を見て確認する必要がある場合などは、例えば、同じ空間にいるとスタッフのデスクに行き、パソコン画面を目ればいいのですが、大阪と埼玉だとそうはいきません。そこで、TeamViewerを使っています。10秒もかからず大阪の私のパソコンから埼玉のスタッフのパソコン画面を見ることが出来、また操作することも出来ます。また、その逆も可能です。つまり、埼玉のスタッフが私の大阪のパソコンを見ることも、操作することも出来ます。画質も非常に鮮明で、自分のパソコン画面か埼玉のスタッフのパソコン画面が分からなくなる時があるほどです。

TeamViewerを使う際は、必ずSkypeで通話しています。もちろんSkypeなので、どれだけ通話をしても通話料金はかかりません。TeamViewerやSkypeは勤務時間中、常時接続しているわけではありません。必要な時のみです。TeamViewerもSkypeも通常時はオフラインです。Googleドキュメントは、スプレッドシートで情報を作成して、共有設定しています。主に、顧問先別の資料の受領状況や月次業務の顧問先別不明事項などです。

 また、当初はVPNを使う予定だったのですが、現在ほとんど使っていません。VPNだと若干画質が落ちることと、やはり若干の操作にタイムラグがあります。なので、ほとんど使わなくなってしまいました。VPNの種類によっては、そのような問題がないかもしれませんが、私の使っているマイクロソフトのVPNは、あまり画質が良くないです。なので、毎回、顧問先ごとの会社データと資料をDropboxに置いてやりとりをしています。この場合、今どちらが正データなのかをお互い把握しておく必要があります。これも、Googleドキュメントで表を作成して共有設定して管理しています。この辺りは、データのやり取りや管理が面倒と感じていることなので、改善の余地があると思っています。

在宅勤務のメリット

【税理士事務所側】
1.優秀な人材を日本中から探すことが出来る。
2.パンデミックや災害時の社会インフラ停止の影響を受けない。(地震などで鉄道その社会インフラがストップしても出社しなくていいので、それらの影響を受けにくい。)
3.事務所移転による、スタッフの退職を防ぐことが出来る。(通勤できなくなるなどの理由。)
4.周りに人がいなくなるので、集中しやすい。(同じ空間にスタッフがいると、すぐにスタッフが質問してくるので、集中が途切れることになる。)
【スタッフ側】
1.生涯のライフプランによる影響を受けない。(例えば、パートナーの転勤、親の介護、自身の出産など。)
2.通勤がなくなる。(自宅から会社まで毎日往復1時間として、1年間では、相当の時間数になります。その時間を仕事や家事など、他に充てることが出来ます。1日は24時間しかないので、できるだけ無駄な時間はなくしたいものです。)
3.自由な働き方が可能になる。(基本的には、何時から何時までというのはスタッフに任せています。なので、仕事があっても1日の予定を自由に立てやすい。)

在宅勤務のデメリット

【税理士事務所側】
1.代表税理士以外に他にスタッフがいない場合などは、ちょっとした雑用や頼み事が出来ないので、すべて代表税理士がやることになる。(郵便事務や、お客様へのお茶出しなどの雑用など)
2.税理士事務所とスタッフ宅との、資料や書類などのやり取りの郵便費や手間がそれなりにかかる。
【スタッフ側】
1.同じ空間に誰も居ないので、分からないことがあれば、ひとりで悩む傾向にある。(できるだけ、すぐにSkypeで聞くようにしてもらってます。)
2.孤独感を感じるかもしれない。(配偶者や家族がいれば、仕事以外でのコミュニケーションの場があるので、それほど問題にはならない。完全に一人暮らしの方の場合は、孤独感を感じるかもしれない。)

表情や感情が見えないというのは、時に誤解を生む

仕事中に連絡事項などがある場合は、通話ではなくSkypeのチャットでやり取りをしていることが多いです。その際、相手の顔を見て表情+口頭で伝えるのと、顔を見ずにテキストだけで伝えるのでは、送り手側の意図が受け手側に誤って伝わる可能性があります。ここは気をつけなければならないとこだと思っています。 Skypeのチャットでテキストだけの意思疎通は、受け手側が送り手側の表情を分からないので、送り手側にその意図がなくても、受け手側がきつい表現に受け取ってしまう恐れがあるのです。そういう時は、できるだけテキストの語尾をソフトな表現にしてみたり、絵文字を使うこともあってもいいかもしれません。テキストメッセージだけでは、言葉の抑揚が伝らないので、時に誤解を生む可能性があります。

 同様に、同じ空間にいるとちょっとした雑談などをしたりするものですが、同じ空間にいないので、そういうことも少なく、たまにSkypeで通話しても仕事の必要な話だけで終わることも多いのです。雑談もなく、まったく仕事だけの会話に終始してしまうと、仕事仲間という関係性を築くのが多少難しくなってしまいます。そういう意味では、たまにはSkype通話での仕事の会話の合間にでも、ちょっとした雑談をしてみるのも必要かもしれません。忙しい時期は、なかなかそれも難しいのですが。

まとめ

2011年3月の大震災時、鉄道やバスなどの社会インフラが麻痺し、多くの帰宅困難者が出ました。それ以来、多くの企業で在宅勤務を導入しています。 また、現在はIT技術を利用することによって、数年前には考えられなかった働き方が可能になりました。特に、VPNやクラウドコンピューティングなどのIT技術の発達が在宅勤務をする上で果たした役割は非常に大きいと思います。実際に、在宅勤務を導入してからでも、同じ空間にいないことのデメリットは、ほとんどないと感じています。税理士事務所だから可能になったわけではなく、どんな業界でも可能だと思います。また、在宅勤務にはある程度、お互いにITリテラシーがあり、信頼関係を持っていることも重要な事です。今後益々、働き方において、どこで仕事をするのかといった場所的な問題は、ほとんどなくなるのではと思っています。

「参考記事」
震災後、シトリックスの在宅勤務を支えた2つの制度
www.citrix.co.jp/rd/ws_dl03.html http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1110/06/news011.html

KDDIにおける在宅勤務とリモートアクセスのテレワークシステムをシトリックスのデスクトップ仮想化ソリューションで実現
http://www.citrix.co.jp/company/press/releases/20091221.html

企業に真のワークスタイル変革をもたらす実践方法論
http://www.school.ctc-g.co.jp/columns/citrix/citrix29.html