freeeを実際に使ってみて分かったこと-クラウド会計




freee株式会社が、今年の3月にクラウド会計ソフト、freeeをリリースして9ヶ月が経とうとしています。早いものでもう師走ですね。

 

さて、このfreee、実際に私も使ってみました。我々の業界ではおそらく誰もがこのようなツールが欲しいなと思っていたので、業界内外で結構な注目だったようです。 ネット上でもかなり好評で関連書籍も発売されているようです。twitterやブログ上でも評価の高い関連記事が目立ちます。しかし、本当のところはどうなのでしょうか。かなり違和感を感じてしまったので、ブログ記事にしようと思った次第です。

 

好評している人たちの多くは、簿記の知識を持ち合わせてなく、かつ、彼らはfreeeでまだ最初の決算を一度も迎えてないということも忘れてはならないことです。

非常に斬新なサービスで、freeeがマッチするお客さんには私もお勧めしているのですが、使っていくうちにいろいろと課題も見えてきたので、今後の応援の意味も込めて、本日のエントリーでは、その点などを中心に書いていきたいと思います。(決して、freeeを使うことを否定する記事ではないということも、付け加えておきたいと思います。)

 

全ての帳簿で伝票が自動作成されるわけではない

 

freeeは、自社のHP上で次のようにその特徴を述べています。
「自動で帳簿がつけられる 銀行やクレジットカードを登録するだけで、自動で会計帳簿が作成できます。」

これだけを読むと、すべての帳簿が自動作成され、決算書まで自動で作ってくれる印象を持ってしまいますが、決してそうではありません。確かにこれは一部正しいのですが、実際はすべての帳簿が自動作成されるわけではありません。

 

自動作成されるのは、基本帳簿のうち、預金出納帳のみです。簿記の知識がない人が、これだけみると、いとも簡単に青色申告65万円控除が受けられる青白申告決算書を作成できそうですが、決してそうではないということを知って下さい。

 

基本帳簿というのは、

1.現金出納帳

2.預金出納帳

3.売掛帳及び買掛帳

などがあるのですが、
freeeでは、1の現金出納帳は、自動作成されるわけではなく、手入力が必要です。現金の入出金はすべてひとつひとつ手入力する必要があるのです。また、売掛金や買掛金の発生伝票の登録についても、手入力でする必要があります。自動で伝票が作成できるのは、銀行口座やクレジットカードの入出金取引のみです。つまり、2の預金出納帳のみです。実際のところ、freeeは手入力の作業は決して少なくないと言えます。

例えば、会社によっては通帳取引が1ヶ月にそれほど多くなく、現金支出のレシートが非常に多い場合があります。そのような会社は、freeeを使っても会計業務が楽になるわけではありません。

1カ月200枚現金で支払ったレシートがあると、200枚のレシートをひとつひとつ、手入力していくことになるのです。現金の入出金がそこそこある会社によっては、インストール型会計ソフトで伝票辞書機能を使った方が楽です。

 

freeeも、一部のPOSレジシステムや交通系ICカードやスマフォアプリと提携してるようですが、それでも、例えばスマフォアプリなどでは、レシートを1枚1枚撮影して、確認して、データを送ってfreeeにインポートして、再度確認して、、、考えるだけでも面倒です。それなら、レシートを科目毎に分類などして、既存インストール型会計ソフトの伝票辞書を使った方が楽でよっぽど効率的だと言えます。

 

しかし、freeeのHPのトップページには、現金の入出金について、ひとつひとつ手入力が必要である記載はなく、ヘルプのいち記事として書かれてあるだけです。

 

経理の合理化というのは、どちらかというと「預金」ではなく「現金」の出金処理をいかに合理化するかの問題です。私たちの業界でも、長年模索している事なのです。freeeでは、まだこの問題を解決できていません。預金取引の合理化は、私たちの業界でも、既に早業BANKやEXCELで独自にマクロを組んで対処してきたことです。ちなみに、現金の入出金データについての理想型は、edy、WAON、IDのデータが会計ソフトと提携し、かつ自動仕訳できればいいのですが、現在のそのようなサービスを提供している会社はありません。

freeeでは、適正な期間損益計算は難しいかもしれない

 

freeeを使う会社や個人は、会計業務に手間を掛けたくないと考える層だと思いますので、そういう層はそもそも売掛金や買掛金を期中には使わないと予想できます。

 

freeeが非常に評判が良い理由として、簡単に導入できて、楽に預金出納帳が作成できるということがあります。つまり、銀行データやクレジットカードデータが等が自動で取り込め、かつ、勘定科目までが自動で登録できるという点です。しかし、これがそのままデメリットになっています。

 

freeeでは銀行口座に売上金が入金された時に売上高を計上し、そして預金口座から仕入代金を振り込んだ時が仕入が計上となります。つまり、freeeは基本的に現金主義会計なのです。
(売掛金や買掛金を処理している場合を除きます。)これでは適正な期間損益計算ができません。適正な期間損益計算を行うには現金主義会計ではなく発生主義会計で伝票作成していく必要があるのです。

 

通常は、売掛金や買掛金を計上して売上高や仕入れ高を計上していきます。売掛金の発生は物やサービスを提供したときです。例えば10月に売り上げたものが12月に入金されるとした場合、本来は10月の売り上げに計上されていなければなります。しかし、freeeでは12月に入金されたときが売り上げになります。2ヶ月も損益の数字が違ってくると経営成績として会計ソフトを参照する事は非常に難しくなってしまいます。

 

freeeでも発生主義会計で伝票作成をすることはできるのですが、その場合は、売掛金や買掛金の発生伝票の登録をしたり、振替伝票や請求書を発行して発生主義会計で行うことになるようです。しかし、そのような方法で伝票作成するのは手間と労力がかかります。インストール型の会計ソフトでは、伝票辞書機能を使うことで簡単に伝票が作成できます。

 

サクサク感はインストール型会計ソフトが上

 

クラウド会計ソフトの使い勝手は、そのサーバー能力や通信速度にダイレクトに依存されます。一方、インストール型の会計ソフトは、基本的にはパソコン性能にのみ影響されます。しかし、今どきのパソコン性能は、十分に会計ソフトをサクサク動かせるものです。

 

一方、クラウド会計は、どれだけ性能の良いパソコン使っていても、通信速度が遅かったり、そのサービスのサーバー処理能力がよくないと、サクサク感はなくなってしまいます。 freeeとインストール型の会計ソフトを比べてみた結果、若干インストール型の会計ソフトの方がサクサク感がありました。

 

その差はコンマ数秒かもしれませんが、毎日の作業になるとこれが非常に大きな差となってきます。光回線でそう感じるので、wimaxなどのモバイルネット環境では、もっと差がはっきりと感じられるかもしれません。

 

なぜか預金通帳やクレジットカード明細の摘要欄は無視される

 

通常、会計事務所の実務では、通帳の摘要欄やクレジットカード明細の摘要欄をそのまま伝票の摘要に持ってくることが多いかと思います。
しかし、freeeでは、それらの摘要欄の情報は取り込めても、伝票には反映されません。せっかく取り込んだデータをなぜ活用しないのか非常に謎なところです。このあたりは、是非改善してほしいものです。

 

インストール型会計ソフトにある、当たり前の機能が、freeeにはない

 

伝票辞書の登録がない(自動登録ルールがあるので、割り切って必要ないと思っているのかもしれない。)

帳簿形式の入力ができない(簿記の知識がなくても入力可能な入力形式です。)

勘定科目や補助科目などの保守情報がCSVとしてインポート、エクスポートできない(既存会計ソフトからfreeeへの移行の障壁になっている)

登録済み伝票の一括編集機能がない

消費税税抜き処理入力方式を選択の場合、元帳や仕訳帳で取引毎の税抜き元帳になる。つまり、仮受消費税などが、取引毎に元帳に表示されます。(税込表示や月末税抜元帳の表示は不可だと思います。)

手形台帳がない

部門管理できない

補助科目で管理できない(これについては、タグで代用しているようですが、元帳で主科目と補助科目の同時表示がないのは不便。)

etc…

特に、帳簿形式の入力や複合伝票形式の入力ができないのは不便だと感じました。

 

料金について

 

個人事業主プランが1ヶ月980円、法人プランが1ヶ月1980円。

 

これが高いか安いか。 例えば、有名なソフトである弥生会計を例に比べてみたいと思います。 個人事業主ではやよいの青色申告というソフトを使います。アマゾンでは10800円で売られています。 (平成25日11月17日現在)

 

freeeは、個人事業者は、1ヶ月980円なので、11ヵ月でやよいの青色申告を買った方が得になります。(ただし3ヶ月無料の期間があるので、実際には14カ月間になります。) 個人事業主が、freeeを14ヶ月以上使う場合はを使うと価格面でデメリットが生じてきます。

 

では法人ではどうでしょうか。弥生会計 14 スタンダード が、アマゾンでは33700円で売られています。(平成25日11月17日現在)

法人プランは、1ヶ月1,980円です。17ヶ月で弥生会計買った方が得になります。(ただし法人プランも3ヶ月の無料期間があるので実際には20ヶ月が分岐点となります。)20ヶ月以上使う場合はfreeeを使う方が価格面でデメリットが生じてきます。

 

弥生会計などは、バージョンアップに費用が掛かると思われがちですが、バージョンアップ内容が必ずしも自社に関係ないことも多く、そのような場合は、必ずしもバージョンアップが必要とは言えません。そもそも、会計事務所と契約している場合は、全く必要ないと思います。

 

その他

一旦登録した伝票の修正が非常に面倒:インストール型の会計ソフトでは、一度登録した伝票の内容を修正する場合、非常に簡単に修正をすることができますが、freeeの場合は、一手間も二手間もかかります。このあたりも、是非改善してほしいものです。

 

UI(ユーザーインターフェイス):既存のインストール型の会計ソフトのUIとかなり異なります。特に、振替伝票は戸惑うのではないでしょうか。既存の会計ソフトに慣れている人が、freeeへ乗り換えるのも容易でないと感じました。UIや入力方法がfreeeは、独自過ぎる感があると感じました。

 

インターネット環境が必要:インストール型の会計ソフトでは起動すれば、すぐ入力できるが、freeeなどのクラウド会計はインターネット環境が当然に必要です。飛行機の中や地下鉄では使用できません。できれば、光回線レベルの高速通信が必要です。モバイル環境では、厳しいかもしれません。

複合取引の伝票作成が少し面倒。 etc…

 

現実的には、「自計クラウド」とインストール型会計ソフトと併用がオススメ

 

何が何でもクラウド会計ですべてを完結させるのではなく、クラウド会計+既存の会計ソフトの組み合わせがよいと考えています。 いろいろなクラウド会計サービスを試した結果、株式会社アジケが開発提供している「自計クラウド」が方向性としては、いいのではないかと思います。

 

では、いつでも、どこでも会計ソフトを操作したい、閲覧したいという意見には、VPNなどによるリモートアクセスで解決できると考えています。 結論として、「自計クラウド」+インストール型会計ソフトが費用対効果でも会計業務効率化でもオススメ。

Windowでは、自計クラウド+弥生会計の組み合わせ、
Macでは、自計クラウド+A&A会計の組み合わせ(弊事務所では、お客様に自計クラウドのデータをA&A会計へインポートするEXCELツールをご提供しています。)

 

(ちなみに株式会社アジケの方と会ったことも話したこともないので、タイアップ記事ではないことも書いておきたいと思います。)

 

まとめ

freeeのHPを見る限り、すべての帳簿が自動作成される夢の会計ソフトで、簿記の知識を知らない人でも驚くほど簡単に青色申告決算書が作成できる、というニュアンスが感じ取れるのですが、実際は、会社によっては手入力もそれなりに必要で、決算書作成には、簿記の知識もある程度必要であることを知って頂きたくブログを書きました。

 

まだ、発展段階のサービスなのかもしれません。 自社が本当にfreeeを使うことによって経理作業が効率化するのか、既存のインストール型会計ソフトでは本当にダメなのか、「自計クラウド」とインストール型会計ソフトの組み合わせはどうなのかなどを、十分に比較検討した上で会計ソフトを決定することが大切であると思います。

===平成25年12月27日追記
株式会社アジケの自計クラウドのサービス終了がアナウンスされています。方向性として非常にいいサービスだったので残念です。 https://jikeicloud.com/notifications/11

いろいろググってみると、サービス開始当初から大阪の会計事務所とトラブっていたようですが、これが影響しているのかもしれません。
会計系WEBサービスを紹介したら盗用された?どうしても書いておきたかったその経緯